1991年
『ロックンロール・コレクション/彼が愛したテレキャスター』(東京書籍)
この本で扱ったのはストーンズ、ザ・フー、 ザ・フェイセズ、ジャニス・ジョプリン、ザ・ドアーズ、ジョニー・ウィンター、J・ガイルズ・バンド、ザ・バンド、ブルース・スプリングスティーン、セックス・ピストルズだ。ストレート・ロックンロールの名曲ばかりがCDに収録され、本のほうではそれぞれのミュージシャンを扱うだけではなく、彼らの交遊、誰が誰をどんなふうに支えてきたか、教え教えられ、ロックンロールがどんなふうに前進してきたかということを書いたつもりである。ブルースとロックンロールは、汲めども尽きぬ泉なのだ。
『セイヴ・ミー/ぼく達の未来』(立風書房)
これは、『セイヴ・ザ・ランド』と対をなす本だ。ジャンルで分けるなら、エッセイ集だ。向こうが小説で、こちらは同じテーマの思想編と言うか、哲学編だ。『セイヴ・ザ・ランド』は小説だから、さまざまなデータや、破滅へひた走るわれわれの世界にたいするぼく自身の個人的な意見を述べるには限界があった。だからこの本では、ストレートにぼくは自分の意見を述べている。カヴァーの絵を書いて下さったのは、大阪に在住の友人である西村菜穂さん。この本の装丁は、ほんとう□に素晴らしい。それから、個人的な話になるが、編集を担当して下さった立風書房の小野至氏は、この本の完成を待たずに癌で亡くなった。本書は、彼の最後の仕事のひとつになった。痩せ細った体で仕事をつづける彼の痛々しい、だがいつも前を向いていたその姿を、ぼくは生涯忘れないだろう。
『ファンタスティック・シティへようこそ』(八曜社ルーディーズ・クラブ選書)
これまでにリリースした自分のバンドのCDから選曲したベストアルバムと、自伝がドッキングしたCDブック。ルディーズ・クラブ選書の二冊めでもある。オビに<正直な自伝+ベストアルバム>というコピーをつけたら、仲間うちではウケまくった。本を見るなりほとんどの連中がプッと笑い「ほんとに正直に書いたのかよ?」と言うのだ。ま、なるべく正直に書いた、とここでは言っておこう。しかし、こんな本を昔のガールフレンド達が読んでいるのかもしれないと考えると、ぼくは夜も眠れない。
『アニマル・ハウス』(八曜社ルーディーズ・クラブ選書)
ソー・マッチ・トラブルのファースト・アルバムにして、ぼくが初めて書いた童話。木村大介氏のカラーの絵がついた、CD絵本の決定版だ。<それは・もう・たいへんな・バンド>のメンバーが次々に動物になってしまい、動物のままツアーに出るというお話だ。このCDブックの仕上がりには、ぼくはほんとうに満足している。だが、問題がひとつある。それは、『ブルースマンの恋』や『ハミングバードの頃』、『彼が愛したテレキャスター』を2000円代で出版したために、定価をおさえざるを得なかったことだ。既にある音源を使用しパーセンテージを支払うという形ならなんとか採算はとれても、この『アニマル・ハウス』はソー・マッチ・トラブルのニュー・レコーディングCDが付いているのである。原盤製作費(スタジオ代金なんかのことだ)がかさみ、2000円代じゃ絶対にペイしない。とっても素晴らしいCDブックを出版することができて幸福だが、そのおかげでぼくは破産しそうだ……というのはオーバーだが、こうしたCDブックが経済的に自立するのはひどく苦しい。小説家として、それからソー・マッチ・トラブルのヴォーカリストとして、さらにルーディーズ・クラブ選書の編集長として、ぼくはさまざまな問題に直面することになった。どこかに、原盤製作費をポンッと一千万ほど出してくれるスポンサーはいないものかなぁ。
『ライオンの昼寝』(実業之日本社)
これは、基本的に動物のことばかり書いた連載エッセイ。動物と言っても、自分がチンパンジーになってベッドの上をはねまわったり、雨でびしょ濡れになって犬みたいな気分だとか、そういうのも入っている。朝日新聞に書評が載っていたが、そこには「人類が滅ぶかもしれないという危機の感覚はここまで日常的になった」というような意味のことが書いてあった。そうかな? そこまでオーバーに考えなくてもいいと思うのだが。ただ、成年男子の精子の数が減っているとか、けっこうショッキングな話もあるのは確かだ。いずれにせよ、地球環境や種としての人類のことを考える時、動物行動学や、動物である自分に行き着くーかざるをえないではないか。この連載を『週刊小説』誌に連載している時、湾岸戦争がおこった。海外旅行はひかえるように、などと間の抜けたことを言う政治家が多かったが、ぼくはそれを無視してアフリカへ行った。サウジアラビアの上空を飛ぶ時にはさすがにビビッたし、多国籍軍が給油中だったボンベイの空港に降りられなくて帰国が遅れたりはしたかったが、アフリカ体験は感動的だった。本書の最後には、そんなアフリカでの体験が綴られている。
『僕らがポルシェを愛する理由』(東京書籍・中央公論社文庫)
少年だったぼくがポルシェ911カレラというスポーツカーに憧れ、大人になってから実際にそれを手に入れ、ドライヴィング・テクニックを身につけ、さらにフェルディンド・ポルシェ博士の人生に思いを馳せ、今世紀最大の発明とも言うべき自動車のことを考えるという……1ページめから最後のページまでポルシェ丸かじりの本だ。最初はかるい気分で書き始めたのだが、とても時間のかかる書き下ろしの大作になってしまった。車が好きな男性は、是非御一読を。車に興味がない女性には、男達の内面的なメカニズム研究の参考にしていただければ幸です。
『凍えた薔薇』(ミリオン出版)
これは、かなりエッチなポルノ小説だ。いつだったか、まだマガジン・ハウスから出ていた『エル・ジャポン』に依頼されポルノグラフィーを書いたところ、あいつはポルノグラフィーの才能があるということになってしまった。おだてられ、木に登るような具合で書いた短編を集めたのがこの本。セックスと官能は、人間の無意識の領域と深い関係があり、とても興味深い。何枚か挿入されている写真は、なるべくいやらしいのをと考えながら、ぼく自身が選んだものだ。しかし、この本だけは未だに読者から1通も面白かったとかつまらなかったとかいう手紙が届かないのだが、どうしてなのだろう? みんな、あきれてるのかな。
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